前回に続きホープ真珠のお話。
写真からはわかりにくくて恐縮ですが左のトリハマパールが縦15.6mmに対して右のホープ真珠は縦65mmなので世界最大の真珠という事になります。
1839年イギリスのロンドンで銀行家として巨万の富を築いたヘンリー・フィリップ・ホープという人が収集した宝石の一つです。
ホープ氏は宝石の収集家として有名で、不幸を招く石と呼ばれるホープダイアモンドも彼の持ち物でした。
ホープ真珠もミステリアスな真珠で来歴はホープ氏の手に渡るまで全く分からず。
ブリスターパールと呼ばれる種類で真珠の一部は貝殻に付着していたのでその部分は引きはがして収穫されました。
ブリスターとは英語で水膨れとか泡とかいう意味で一般的なパールが貝の身の中にできたパール袋(サック)の中で育つのに対して貝殻の内側にできた瘤の上に真珠層が重なってできるものでその出来方から区別はされますが成分は同じ真珠なのでジュエリーとして取り扱います。
ホープ真珠の上部には金やダイヤモンド・サファイア・ルビーなどでクラウンの装飾が施されペンダントとして着けられるよう加工されています。
ホープ家所有の後しばらくは行方不明となっていましたがその後アラブ系イギリス人のビジネスマンH. E. Mahdi Mohammed Al-Tajir さんという収集家のもとへ。
幸運にも1993年に三重県の御木本真珠の鳥羽研究所で詳しく鑑定する機会がありました。
真珠専門の研究機関として世界で一番信頼されている研究所ですね。
先の通り真珠の全長は65mm、最大周囲114mm、重さは22.6匁(85g)です。
鑑定の結果、黒蝶貝Pinktada margaritiferaの中にできたブリスター真珠であると推定されたそうです。
宝石にはそれぞれストーリーがつきものですが、このホープパールにもホープダイヤモンドと同じくミステリアスなお話がありそうですね。
もちろん我々が持っているパールにもたとえばお母様から受け継いだとか、20歳になったときお父様が買ってくださったとか、それぞれ物語があるはずです。
お客様とお話しする中でそういった我が家の物語をお聞かせいただけるのはこの仕事をしていて一番の喜びとなります。
特に真珠には優しい思い出がたくさんあるようです。
ご自分で買われたパールにもこれからいろいろなストーリーが刻まれていくことでしょう。
時々宝石箱から出して身に着けてあげてください。
優しい気持ちになれるはずです。